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優しいことば   

ビジネス書中毒だった時期。
30代半ばから会社勤めをして、世間のことを何も知らない主婦が始めたことは「仕事の手引き」を読みあさること。
それまで、買う本と言えばファッション誌、育児書、趣味の本ぐらい。
それが、住宅営業という恐ろしくハードな分野に入ってしまった女の私はどうのように営業してよいか分からず
暗中模索状態。
会社の社員教育は簡単で、会社理念を教えたぐらい。
後は「さ~飛び込み営業へ行ってこい!」とエリア地図を渡す。

何千万円もする家が飛び込み営業のお宅訪問で売れるわけ???
疑問に感じながらも、ただ歩き回るしかなかった。

そんな時、自分の精神を鍛え、営業の本髄を知る為に、私には本しかなかった。

「こうしたらあなたもトップセールスマン」「営業の十か条」「女性が会社で生き残る極意」「不退転の決意」・・・。
書店のビジネス書の前に立つと何故だか勇気が湧いてきた。
経済誌を読み、常にカバンには「元気本」を入れ、毎日は動き回った。

そして、今。
ストレートなビジネス書はもう読まない。

本当に心に響く言葉は、優しく問いかける日常の言葉だと言うことに気がついた。
命令形でもなく、喝を入れる元気言葉でもなく、成功事例を羅列したものでもない。

毎日の生活の中に起こるちょっとしたこと。
そこから感じ取る感性や情熱や誠実さ。

このことを理解出来るまでに、かなりの時間がかかった。

書物で例えるなら
優しいことば_f0031420_7102297.jpg

デザイナーの「ナガオカケンメイの考え」
暮らしの手帳の編集長、松浦弥太郎氏が書いた「今日もていねいに。」

二人共、業界の中ではとても忙しく大変な立場で仕事をしてる方。
でも、本の中の言葉はとても優しく、分かりやすい。

しかし、読む人が読めば分かる奥の深さ。
私が15年前にこの本を読んだら、上澄みの部分しか読み取れなかっただろう。
ひとつの問いかけには、とても深い意味があることは、経験してきたから分かることばかり。

松浦弥太郎氏の一説を引用させて頂きます。

全部が簡単なことではないので、繰り返しがえんえんと続くこともあります。
それでも一向にかまいません。「繰り越している」と言う状態を自覚するだけで、随分違うと思います。
どうやら人には、できなかったことを「なかったこと」にしてしまう心の作用があるようで、へたをすると、できなかったことを忘れる努力をしかねません。
そこで、「やりたいけれど、できないんだ」と確認することが要になります。


これを普通のビジネス書風に書き換えれば、もっと違う言葉が出てきます。
でも今の私には、この優しい言葉で、充分に気づかされることがあります。

物事を難しく語る人。
優しい言葉で心に残す人。

私は後者になりたい。

by k2kikiya | 2009-09-14 07:34 | ことば

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